エムポックス(mpox、旧称サル痘)
著者:院長 福地裕三(日本性感染症学会ガイドライン準拠)
※ 当院ではエムポックスのPCR検査は実施していません。
エムポックスが心配な方へ
2026年現在、東京都内でもエムポックスの報告がみられています。
性器・肛門周囲・口腔内の水疱、発疹、ただれ、強い痛み、発熱、リンパ節の腫れなどがある場合は、自己判断せず、事前に医療機関または保健所へ相談してください。
当院ではエムポックスのPCR検査は実施しておりません。エムポックスが強く疑われる症状がある場合は、直接来院せず、まずは事前にご相談ください。
エムポックス(mpox)とは
エムポックス(mpox)とは、サル痘ウイルスの感染によって発症するウイルス感染症です。
天然痘に似た特徴を持つウイルスであり、発疹や発熱などの症状を引き起こします。
感染経路は、接触感染や飛沫感染によるものとされています。
感染者の多くは男性で、性的接触による感染例も多く報告されています。
とはいえ誰でも感染しうる感染症ともいえます。
そのため、性感染症の側面も併せ持つ感染症といえます。
サル痘は、1970年に初めて報告されて以降、主にアフリカの一部地域で発生していました。
しかし近年では、イギリス・スペイン・ポルトガルなどを中心に世界的な流行が確認されています。
また、2022年7月には日本でも初めて感染者が報告されました。
サル痘からエムポックスへの名称変更は、人種差別につながる偏見を防ぎ、動物福祉の観点にも配慮するためです。
世界保健機関(WHO)が2022年11月にmpoxへの変更を推奨したことに伴い、日本でも感染症法上の名称が2023年5月に変更されました。
国内・東京都内でも報告が続いています
エムポックスは、2022年以降、欧州やアメリカ地域を中心に国際的な流行が報告され、日本国内でも患者の報告が続いています。
東京都内でも2026年に入ってから報告がみられており、2026年4月にはクレードIbの患者も確認されています。
ただし、一般の方が症状だけでエムポックスの型や感染症の種類を判断することはできません。発疹や水疱、発熱、リンパ節の腫れ、性器・肛門周囲の痛みなどがある場合は、症状と接触歴を含めて医療機関または保健所へ相談することが大切です。
サル痘ウイルス粒子の電子顕微鏡の画像
出典:CDC
感染経路は
エムポックス(mpox)の主な感染経路は、感染している方の皮膚病変、体液、粘膜との接触です。
近年の流行では、性的接触を含む濃厚な皮膚接触に関連した感染例が多く報告されています。
- 感染者の発疹、水疱、かさぶた、体液への直接的な接触
- 性器、肛門、口腔内などの粘膜同士の接触
- 感染者が使用した寝具、タオル、衣類などへの濃厚な接触
- 近距離で長時間、対面して飛沫にさらされた場合
- エムポックスウイルスに感染した動物との接触
一方で、短時間すれ違う、同じ空間にいる、電車のつり革に触れるといった日常的な接触だけで、過度に心配する必要はありません。
また、現時点では、実際に空気感染を起こした事例は確認されていません。
性的接触(性行為)との関係、誤解されやすいポイント
mpoxは、主に皮膚や粘膜の接触で感染します。近年は特に、性的接触を含む濃厚な皮膚接触に関連した報告が多くみられます。
- 性器や肛門周囲に発疹が出ることもあります(痛みや違和感を伴う場合があります)。
- キス(口と口、口と皮膚)など、密な接触でも感染し得ます。
- コンドームはリスク低減に役立つ可能性がありますが、皮膚接触を完全には防げません。
心当たりのある接触があった場合は、約21日間(3週間)は体調変化に注意し、発熱や発疹など症状が出たら早めにご相談ください。
症状とは
エムポックス(mpox)の潜伏期間は、感染してから多くは1〜2週間程度ですが、1〜21日程度の幅がありますとされています。
初期症状としては、まず発熱がみられ、その後に発疹が出現します。
発疹は全身に広がる場合が多いものの、性器や肛門周囲のみに限局してあらわれることもあります。
その後、天然痘に似た水疱が形成され、徐々にかさぶた(痂皮)となって皮疹が治癒へ向かいます。
なお、症状だけでは水痘(水ぼうそう)や梅毒との鑑別が難しい場合もあります。
性器・肛門周囲だけの発疹でもエムポックスの可能性があります
エムポックスでは、発熱やだるさなどの全身症状が先に出て、その後に発疹が出ることがあります。
しかし、近年の流行では、発熱などの前駆症状が目立たないまま、性器、肛門周囲、口腔内などに限局して発疹や水疱が出るケースも報告されています。
特に、性器や肛門周囲に痛みを伴う水疱、ただれ、潰瘍、しこりのような病変がある場合は、エムポックスだけでなく、ヘルペス、梅毒、尖圭コンジローマなど他の性感染症との鑑別も必要です。
症状だけで見分けることは難しいため、心当たりのある接触がある方や、発疹・水疱が続く方は、早めに医療機関へ相談してください。
エムポックスと間違えやすい性感染症
性器や肛門周囲の発疹、水疱、ただれ、しこりは、エムポックス以外の性感染症でもみられることがあります。
見た目だけで判断することは難しいため、症状の出方、接触歴、検査結果を含めて総合的に確認することが大切です。
- ヘルペス: 性器や肛門周囲に水ぶくれ、浅い潰瘍、ピリピリした痛みが出ることがあります。
- 梅毒: 痛みの少ないしこり、ただれ、全身の発疹などがみられることがあります。
- 尖圭コンジローマ: 性器や肛門周囲にイボ状のできものが出る性感染症です。
- HIV: 発熱、発疹、リンパ節の腫れなどが出ることがあり、心当たりがある場合は検査で確認することが大切です。
発疹やできものの原因は一つとは限りません。不安がある場合は、自己判断せず、医療機関へご相談ください。
右腕と右脇腹に水疱の症状
出典:CDC
当院でできること・できないこと
当院では、エムポックスのPCR検査は実施しておりません。
エムポックスが疑われる発疹や水疱がある場合、確定診断には病変部からの検体採取によるPCR検査が必要になることがあります。その場合は、対応可能な医療機関や保健所への相談が必要です。
一方で、性器・肛門周囲・口腔内の発疹やできものは、エムポックス以外の性感染症でもみられることがあります。
当院では、症状や経過を確認したうえで、梅毒、ヘルペス、尖圭コンジローマ、HIVなど、性感染症の可能性についてご相談いただくことは可能です。
ただし、エムポックスが強く疑われる症状がある場合は、院内感染防止のため、直接来院せず、事前に医療機関または保健所へご相談ください。
エムポックス(mpox、旧称サル痘)の検査や診断について
エムポックス(mpox)は、症状(発疹の見た目や経過)だけで確定が難しいことがあるため、疑わしい場合は検査で判断します。 一般的には、水疱(みずぶくれ)や膿疱(うみを含む発疹)の内容液や、痂皮(かさぶた)などを採取し、PCR検査でウイルス遺伝子を確認します。
- 発疹に加え発熱、リンパ節の腫れ、強い痛みなどがある場合は、早めにご相談ください。
- 受診の際は、事前に医療機関へ連絡し、発疹部位はガーゼや衣服で覆い、マスク着用のうえお越しください。
- 状況により、保健所や専門の医療機関をご案内する場合があります。
感染力はいつまで?自宅での過ごし方(隔離の目安)
感染性は、症状の出現から、皮疹(発疹)が治癒して痂皮がすべて脱落し、新しい皮膚が形成され、粘膜病変も治癒するまで続くと考えられています。 発疹は個人差がありますが、2〜4週間程度続くことがあります。
ご自宅では、次の点を意識してお過ごしください。
- 同居家族との密な接触を避ける(抱擁・同じ寝具で寝る等は控える)
- 寝具、タオル、衣類、食器の共用を避ける
- 発疹部位はできるだけ覆う(長袖やガーゼ等)
- 手洗いを徹底する(石けんと流水)
- 触れやすい場所(ドアノブ等)は清拭や消毒する
- 体調が悪いときは無理をせず、水分摂取と休養を優先する
治療について(対症療法が基本です)
エムポックスの治療は、解熱鎮痛、皮膚のケア、二次感染予防、脱水予防などの対症療法が基本です。
多くは自然に軽快しますが、痛みが強い場合、目の症状がある場合、免疫が低下している方、妊娠中の方、小児などでは、早めの医療機関への相談が必要です。
国内では抗ウイルス薬が用いられる場合もありますが、投与の対象や実施体制は症状、重症化リスク、医療機関の対応状況によって異なります。
濃厚接触の目安と、接触後にできること
濃厚接触の可能性がある場合は、以下を目安に行動してください。
- 21日間(3週間)は体調の変化(発熱、倦怠感、リンパ節腫脹、発疹など)に注意する
- 症状が出た場合は、外出を控え、事前連絡のうえ医療機関へ相談する
- 同居者やパートナーがいる場合は、発疹が治癒するまで密な皮膚接触や性行為を控える
手の甲に発疹の症状
出典:CDC
重症化しやすい方、早めに相談すべき症状
多くは自然に軽快することもありますが、体調や背景によって重症化する可能性があります。
重症化リスクが高いとされる方
- 妊娠中の方
- 小児
- 免疫が低下している方(例:免疫抑制薬内服中、未治療HIVなど)
次の症状がある場合は早めに医療機関へ
- 強い痛み(特に肛門周囲痛・直腸痛、排尿時痛など)
- 目の症状(痛み、充血、見え方の異常)
- のどの強い痛みや嚥下困難、脱水(飲めない・食べられない)
- 呼吸苦、意識が遠のく、強い全身状態の悪化
エムポックス(サル痘)に関するよくある質問
Q. エムポックスとは何ですか?
エムポックスは、エムポックスウイルスによる感染症です。 以前は「サル痘」と呼ばれていましたが、現在は感染症法上の名称も「エムポックス」に変更されています。
発熱、頭痛、筋肉痛、リンパ節の腫れ、発疹、水疱、ただれなどがみられることがあります。 近年の流行では、性器・肛門周囲・口腔内などに限局して症状が出るケースも報告されています。
Q. エムポックスは性病ですか?
エムポックスは、性感染症そのものとして分類される病気ではありません。 しかし、近年の流行では、性的接触を含む濃厚な皮膚接触によって感染したと考えられる例が多く報告されています。
性器・肛門周囲・口腔内に発疹や水疱、ただれ、痛みがある場合は、エムポックスだけでなく、ヘルペス、梅毒、尖圭コンジローマなど他の性感染症との鑑別も大切です。
Q. 当院でエムポックスの検査はできますか?
当院では、エムポックスのPCR検査は実施しておりません。
エムポックスが疑われる場合は、発疹や水疱などの病変部から検体を採取し、PCR検査で確認する必要があります。 対応可能な医療機関や保健所への相談が必要になることがあります。
ただし、性器・肛門周囲・口腔内のできものや発疹について、梅毒、ヘルペス、尖圭コンジローマ、HIVなど他の性感染症が心配な場合は、当院でご相談いただけます。
Q. エムポックスが心配な場合、直接来院してもよいですか?
エムポックスが疑われる症状がある場合は、直接来院せず、事前に医療機関または保健所へ相談してください。
発疹、水疱、ただれ、発熱、リンパ節の腫れなどがあり、エムポックスの可能性がある場合は、院内感染防止のため、事前連絡が大切です。
受診する際は、発疹や水疱がある部位を衣服やガーゼなどで覆い、マスクを着用し、人との密な接触をできるだけ避けてください。
Q. エムポックスではどのような症状が出ますか?
エムポックスでは、発熱、頭痛、筋肉痛、倦怠感、リンパ節の腫れなどのあとに、発疹や水疱が出ることがあります。
発疹は、顔、手足、体幹、性器、肛門周囲、口腔内などに出ることがあります。 痛みを伴う水疱やただれ、かさぶたとしてみられることもあります。
一方で、近年の流行では、発熱などの全身症状が目立たず、性器や肛門周囲の症状だけで気づかれることもあります。
Q. 性器や肛門周囲だけの発疹でも、エムポックスの可能性はありますか?
はい。性器・肛門周囲・口腔内など、限られた部位だけに発疹や水疱が出ることがあります。
特に、性的接触のあとに、性器や肛門周囲の痛み、できもの、水ぶくれ、ただれ、しこりのような症状が出た場合は注意が必要です。
ただし、見た目だけでエムポックスかどうかを判断することはできません。 ヘルペス、梅毒、尖圭コンジローマなど、他の性感染症でも似た症状が出ることがあります。
Q. エムポックスはどのように感染しますか?
エムポックスは、感染している方の発疹、水疱、かさぶた、体液、粘膜などに直接触れることで感染することがあります。
性的接触を含む濃厚な皮膚接触、感染者が使用した寝具・タオル・衣類への接触、近距離で長時間対面して飛沫にさらされることなどが感染経路として考えられています。
一方で、短時間すれ違う、同じ空間にいる、電車のつり革に触れるといった日常的な接触だけで、過度に心配する必要はありません。
Q. エムポックスは空気感染しますか?
現時点では、実際に空気感染を起こした事例は確認されていません。
感染の中心は、発疹や水疱、体液、粘膜などへの直接接触、または近距離で長時間の対面接触です。
そのため、日常生活の中で短時間同じ場所にいたというだけで、強く心配しすぎる必要はありません。 ただし、症状がある方との濃厚接触や性的接触があった場合は、注意が必要です。
Q. エムポックスとヘルペス・梅毒は見分けられますか?
見た目だけで正確に見分けることは難しい場合があります。
ヘルペスでは、性器や肛門周囲に痛みを伴う水疱や浅い潰瘍が出ることがあります。 梅毒では、痛みの少ないしこりやただれ、全身の発疹がみられることがあります。 エムポックスでも、性器や肛門周囲に水疱、ただれ、痛み、リンパ節の腫れなどが出ることがあります。
症状だけで判断せず、必要に応じて検査で確認することが大切です。
Q. エムポックスが心配な場合、何科を受診すればよいですか?
発疹や水疱がある場合は、皮膚科、感染症対応が可能な医療機関、または保健所へ事前に相談してください。
性器・肛門周囲の症状では、性感染症との鑑別が必要になることもあります。 ただし、エムポックスが疑われる場合は、直接来院せず、事前に相談することが大切です。
Q. エムポックスの治療方法はありますか?
エムポックスの治療は、発熱や痛みへの対応、皮膚症状のケア、脱水予防、二次感染予防などの対症療法が基本です。
多くは自然に軽快しますが、症状が強い場合、目の症状がある場合、免疫が低下している方、妊娠中の方、小児などでは、重症化に注意が必要です。
抗ウイルス薬が検討される場合もありますが、投与の対象や対応可能な医療機関は限られます。 症状やリスクに応じて、医療機関で判断されます。
Q. エムポックスは自然に治りますか?
多くの場合、発症から2〜4週間程度で自然に回復するとされています。
ただし、痛みが強い場合、発疹が広がる場合、目の周りに症状がある場合、発熱が続く場合、免疫が低下している方などでは、早めの相談が必要です。
また、かさぶたが完全に取れて皮膚が治るまでは、周囲の方への感染に注意が必要です。
Q. エムポックスが疑われるとき、自宅で気をつけることはありますか?
エムポックスが疑われる場合は、発疹や水疱を触らないようにし、タオル、寝具、衣類などを他の方と共有しないようにしてください。
発疹や水疱がある部位は、衣服やガーゼなどで覆い、手洗いをこまめに行うことが大切です。 同居の方との濃厚接触や性的接触も避けてください。
症状がある場合は、自己判断で受診先に向かうのではなく、事前に医療機関または保健所へ相談してください。
Q. 東京都内でもエムポックスは報告されていますか?
はい。東京都内でもエムポックスの報告がみられています。 2026年に入ってからも報告が続いており、東京都から注意喚起が行われています。
性器・肛門周囲・口腔内の水疱、発疹、ただれ、強い痛み、発熱、リンパ節の腫れなどがある場合は、自己判断せず、事前に医療機関または保健所へ相談してください。
Q. 「サル痘」と「エムポックス」は違う病気ですか?
同じ病気を指します。 以前は「サル痘」と呼ばれていましたが、現在は「エムポックス」という名称が使われています。
検索では現在も「サル痘」と調べる方が多いため、当ページでは「エムポックス(サル痘)」として説明しています。
参考リンク
(最新の知見に基づく最終更新日:2026年5月11日)

