A型肝炎
著者:院長 福地裕三(日本性感染症学会ガイドライン準拠)
A型肝炎が心配な方へ
A型肝炎は、A型肝炎ウイルス(HAV)によって起こる急性肝炎です。 便の中に排出されたウイルスが口に入ることで感染し、汚染された手指や飲食物のほか、 肛門を舐める行為などの性的接触でも感染することがあります。 慢性化はしませんが、成人では症状が強く出ることがあり、まれに重症化することもあります。
まず知っておきたいポイント
・主な症状は、発熱、だるさ、食欲低下、吐き気、黄疸などです。
・感染力は、発症前約2週間ごろから高くなり、発症後もしばらく便中にウイルスが排出されることがあります。
・診断は主に、採血によるHAV特異的IgM抗体で確認します。
・濃厚接触後は、曝露から2週間以内であればワクチンによる予防が検討されることがあります。
| 項目 | 概要 |
|---|---|
| 原因 | A型肝炎ウイルス(HAV)による急性肝炎 |
| 主な感染経路 | 糞口感染、汚染された飲食物、肛門を介する性的接触など |
| 主な症状 | 発熱、倦怠感、食欲低下、吐き気、黄疸、白色便など |
| 検査 | 採血によるHAV特異的IgM抗体検査 |
| 予防 | 手洗い、衛生対策、リスクがある方ではワクチン接種 |
早めに受診を考えたい症状
強いだるさ、黄疸、吐き気や嘔吐が続く、水分が取れない、意識がぼんやりするといった症状がある場合は、 早めに医療機関へご相談ください。感染機会からの日数にかかわらず、症状がある場合は待たずにご相談いただくことが大切です。
A型肝炎ワクチンの接種回数、スケジュール、料金については、 A型肝炎ワクチンのページで詳しくご案内しています。 濃厚接触後の対応や、渡航前の予防接種を検討している方はあわせてご確認ください。
A型肝炎とは
A型肝炎は、A型肝炎ウイルスによって引き起こされる急性肝炎です。
肝炎が遷延し、急性肝不全を併発することもありますが、慢性化することはなく、やがて自然に回復します。
出典:国立感染症研究所
ウイルスを含む糞便に触れた手で口を触れることで感染し、これを糞口感染といいます。
また、肛門を舐めるなどの性的接触によっても同様に感染します。
感染力が強いため、家族内で感染が広がることもあります。
日本国内の動向
A型肝炎は日本では比較的まれな感染症ですが、年によって報告数が増えることがあります。国内では流行年に患者報告が増加することがあり、渡航歴がない国内感染例もみられます。
そのため、海外渡航者だけの病気とは限らず、飲食物や性的接触を含む感染機会があった場合には注意が必要です。
出典:国立感染症研究所
症状とは
約4週間の潜伏期間を経て発症します。
発熱、倦怠感、食欲不振、吐き気、黄疸、肝腫大、白色便などの症状がみられます。
通常は1〜2か月ほどで自然に回復しますが、一部では重症化することもあります。
A型肝炎はいつからうつる?
A型肝炎では、便の中へのウイルス排出は発症前約2週間ごろから始まり、発症後もしばらく続くことがあります。特に発症前後は周囲へ感染させる可能性があるため、手洗い、トイレ周囲の衛生管理、タオルや食器の共用を避けることが大切です。
肛門を舐める行為など、便が口に入る可能性のある性的接触でも感染することがあります。
検査とは
検査では、採血によりA型肝炎ウイルスに対するIgM抗体を調べます。
IgM抗体が陽性であれば、A型肝炎に感染していることを示します。
感染の有無は、感染機会から1〜3か月以内に確認することができます。
検査結果の見方(IgMとIgG抗体)
- IgM抗体陽性:急性期のHAV特異的IgMが検出されると、最近の感染が疑われます。IgMは発症2週間頃から検出可能で1か月でピークとなり、3〜6か月で陰性化します。
- IgG抗体陽性:IgGは遅れて出現し長期間持続します。過去の感染やワクチンによる免疫を反映することが多く、IgG陽性が現在の感染とは限りません。
検査で何がわかる?
A型肝炎の診断では、主に採血によるHAV特異的IgM抗体を確認します。IgM抗体が陽性の場合は、最近のA型肝炎感染や急性期が疑われます。
ただし、症状が出てすぐのごく早い時期には陰性のこともあります。発熱、強いだるさ、食欲低下、吐き気、黄疸などの症状がある場合は、感染機会からの日数だけで判断せず、早めに受診してご相談ください。必要に応じて再検査を検討します。
以下に、当院でご案内しているA型肝炎検査の料金をまとめています。
A型肝炎の検査料金
| 項目 | 料金(税込) | 採取部位 | 補足 |
|---|---|---|---|
| A型肝炎(IgM抗体) | 5,500円 | 血液 | 急性期のA型肝炎が疑われる際に行う採血検査です。 |
※ 症状がある場合は、感染機会からの日数にかかわらず早めの受診をご検討ください。
※ 検査時期が早すぎると、陰性でも感染を否定できないことがあります。

治療とは
多くの場合は自然に回復するため、積極的な治療は不要です。
ただし、一部では重症化することもあるため、希望があれば紹介状を作成します。
専門の医療機関で肝機能などの精査を受けることで、重症化に備えることができます。
濃厚接触後(曝露後)の対応
患者と濃厚接触したワクチン未接種者は、曝露から2週間以内にA型肝炎ワクチンを1回接種することで感染を予防できる場合があります。 さらに感染リスクが高い家族やパートナーにはγグロブリン投与が推奨されています(当院では行なっておりません)。 該当する可能性がある方はできるだけ早くご相談ください。
どんな人がワクチンを検討した方がよい?
A型肝炎ワクチンは、衛生環境が不安な地域へ渡航する方、MSM(男性間性交渉のある方)、薬物使用歴のある方、慢性肝疾患のある方、HIV感染のある方などで特に検討されます。
日本では比較的若い世代でA型肝炎の抗体を持たない方が多いとされており、リスクに応じて予防接種を考えることが大切です。接種回数やスケジュールの詳しい案内は、A型肝炎ワクチンのページもあわせてご確認ください。
重症化しやすい方や受診の目安
A型肝炎の多くは自然に回復しますが、年齢が上がるほど症状が強くなり、高齢者では劇症肝炎や死亡の報告もあります。 強い倦怠感、黄疸、嘔吐が続く、水分が取れない、意識がぼんやりするといった場合は早急に医療機関を受診してください。
よくあるご質問
Q. A型肝炎は性行為でも感染しますか?
A. はい。A型肝炎は主に糞口感染でうつりますが、肛門を舐める行為など、便が口に入る可能性のある性的接触でも感染することがあります。
Q. いつからいつまで他人にうつりますか?
A. 発症前後が特にうつしやすい時期です。一般に、発症の約2週間前ごろから便中へのウイルス排出が増え、発症後もしばらく続くことがあります。症状が出ている時期は、トイレ後や食事前の手洗いを徹底することが大切です。
Q. 検査はいつ受けるのがよいですか?
A. A型肝炎の診断では、採血でHAV特異的IgM抗体を確認します。IgM抗体は最近の感染や急性期を示す指標ですが、症状が出てすぐのごく早い時期には陰性のこともあります。発熱、だるさ、食欲低下、吐き気、黄疸などの症状がある場合は、感染機会からの日数にかかわらず早めに受診し、必要に応じて再検査も含めてご相談ください。
Q. 抗体陽性なら今も感染していますか?
A. 必ずしも現在感染しているとは限りません。HAV特異的IgM抗体が陽性なら最近の感染や急性期が疑われますが、IgG抗体だけが陽性の場合は、過去の感染やワクチンによる免疫を反映していることがあります。
Q. 濃厚接触後でも予防できますか?
A. 未接種の方では、曝露から2週間以内であればワクチンによる予防が検討されます。状況によっては免疫グロブリンが考慮されることもあるため、同居家族やパートナーでA型肝炎が判明した場合は、早めにご相談ください。
Q. どんな人がワクチン接種の対象になりますか?
A. A型肝炎の流行地域へ渡航する方、男性間性交渉のある方、薬物使用歴のある方、慢性肝疾患のある方、HIV感染のある方などは接種対象として検討されます。リスクに応じて、接種の必要性を個別に判断します。
Q. 妊娠中でもA型肝炎ワクチンは接種できますか?
A. 妊娠中の接種は、予防接種による有益性が危険性を上回ると判断される場合に限って検討されます。渡航、濃厚接触、慢性肝疾患などでリスクが高い場合は、個別にご相談ください。
最新の知見に基づく最終更新日:2026年3月31日

