クラミジア
著者:院長 福地裕三
クラミジアとは
クラミジアは、日本国内で最も患者数が多い性感染症の一つです。
感染していても自覚症状が乏しいことが多く、気づかないまま放置されるケースが少なくありません。
特に若年層での感染が多く、半数以上の人に自覚症状が見られないという報告もあります。
すでに感染している人との性器・口・肛門を介した性的接触により感染します。
感染部位は性器に限らず、のどや肛門にも及ぶことがあります。
また、目の結膜に感染することで、結膜炎の症状が現れることもあります。
クラミジア感染が進行すると、男性では尿道炎から精巣上体炎へと発展することがあります。
女性の場合は、子宮頸管炎から骨盤内炎症性疾患(PID)に進行することがあります。
自覚症状がないまま感染を放置すると、精巣上体炎や骨盤内炎症性疾患に至り、不妊の原因となる可能性があります。
妊婦がクラミジアに感染している場合、分娩時に新生児へ産道感染するリスクもあります。
症状が乏しいことから、感染リスクの高い方は定期的に検査を受けることが推奨されます。
また、クラミジアと淋病を同時に合併している例も多く見られ20〜30%という高い頻度で合併が報告されています。
クラミジアの顕微鏡写真
情報元:CDC
症状
男性の場合
クラミジア尿道炎は、感染後1〜3週間の潜伏期間を経て発症しますが、症状が乏しいことも少なくありません。
発症しても、軽いかゆみや不快感、排尿時の痛みなどの症状が現れる程度で、膿もさらさらしていて少量であることが多いです。
全く症状がない場合もあり、その場合はいつ感染したか分からないこともあります。
しかし、尿道炎を放置すると、感染が睾丸にある精巣上体にまで広がり、睾丸が腫れるなどの症状を引き起こすこともあります。
精巣上体炎に進行した場合でも、尿道炎と同様の治療対応が必要です。
また、オーラルセックスや肛門性交によって、のどや肛門にも感染する可能性があるため、それらの部位も併せて検査を受けることが重要です。
女性の場合
クラミジア子宮頸管炎は、感染後1〜3週間の潜伏期間を経て発症しますが、症状が乏しいことも少なくありません。
症状としては、おりものの増加、不正出血、下腹部痛、性交時の痛みなどが見られることがあります。
しかし、半数以上の女性がまったく症状を感じないという報告もあります。
感染を放置すると、子宮内膜炎や卵管炎、骨盤内感染へと進行することがあり、その結果、不妊の原因となる場合があります。
また、妊娠中に感染していると、分娩時に新生児へ産道感染するリスクもあります。
さらに、オーラルセックスや肛門性交により、のどや肛門に感染することもあるため、これらの部位についても併せて検査を受けることが重要です。
のどや肛門の場合
のどへの感染は、無症状であることが多いです。
症状が現れる場合は、のどの違和感やかゆみ、痛みなどがみられることがあります。
肛門への感染も、強い症状が出ることはまれですが、違和感やかゆみなどの軽い症状を感じることがあります。
性感染症の中でも感染者数が非常に多い性病です。
出典:国立感染症研究所
検査と診断
検査方法
男性の場合は、尿を採取して検査を行います。
女性の場合は、長めの綿棒のような器具を用いて、膣から分泌物を採取して検査を行います。
生理中は正確な検査結果が得られにくいため、月経終了後に検査を受けることが推奨されます。
のどの検査は、生理食塩水でうがいをして検体を採取します。
肛門の場合は、綿棒のような器具を肛門から数センチ挿入して検体を採取します。
検査の種類
クラミジアの検査は、大きく分けて抗原検査と抗体検査の2種類があります。
抗原検査は、現在クラミジアに感染しているかどうかを確認する検査です。
一方、抗体検査は、感染によって体内で産生される抗体を調べるもので、過去に感染し治癒したことを示す場合もあれば、現在も感染が続いている可能性を示す場合もあります。
抗原検査は、さらに細かく分類するとPCR法、SDA法、TMA法などがあり、いずれも精度の高い検査方法です。
PCR法やSDA法は、DNAをターゲットとして増幅し、検出を行う方法です。
一方、TMA法はrRNAをターゲットとして増幅する方法で、同様に高い検出感度を持ちます。
当院では、精度の高いPCR検査を推奨しています。
このほか、抗原検査にはイムノクロマトグラフィー法と呼ばれる簡易検査キットもあり、わずか数十分で結果が得られますが、上記の遺伝子検査に比べると精度はやや劣ります。
抗体検査は、産婦人科などで子宮頸管以外の腹腔内への感染の有無を調べる目的で用いられることがあります。
感染部位を特定することはできませんが、現在も感染が続いている可能性があるため、妊婦などでは積極的に治療を考慮する場合があります。
一般的には、感染の可能性があった時点から4週間以上経過していれば、抗体が検出されることが多いとされています。
| 項目 | 採取部 | 料金 |
|---|---|---|
| クラミジア PCR | 尿道 | 5,500円 |
| クラミジア 即日 | 尿道 | 5,500円 |
| クラミジア PCR | 膣 | 5,500円 |
| クラミジア 即日 | 膣 | 5,500円 |
| クラミジア PCR | のど | 5,500円 |
| クラミジア PCR | 肛門 | 5,500円 |
| クラミジア 抗体 | 血液 | 5,500円 |
※ 即日検査は、PCR検査に比べて精度がやや劣ります。
※ クラミジア感染が疑われる場合は、検査を行わずにすぐ治療を開始することも可能です。
治療
クラミジア感染症の治療は、抗生剤の内服によって行います。
治療期間は、おおむね1週間程度が一般的です。
効果のある抗生剤には、マクロライド系、キノロン系、テトラサイクリン系の薬剤が使用されます。
一方で、ペニシリン系、セフェム系、アミノグリコシド系の抗生剤は効果が乏しいとされています。
| 項目 | 料金 | 用法 |
|---|---|---|
| クラミジア | 9,000円 | 2回内服 |
※ 送料無料、指定住所へ郵送
治癒の判定
適切に抗生剤を服用した場合でも、抗生剤が効きにくい耐性菌が存在することがあるため、治癒判定の検査が必要です。
治療後すぐに検査を行うと、すでに死滅した菌(死菌)を検出してしまい、実際には治っていても陽性反応が出ることがあります。
そのため、治療後2〜3週間ほど間をあけてから再検査を受けることをおすすめします。
予防
パートナーがいる場合は、パートナーも検査を受け、陽性であれば治療を行う必要があります。
治療をしないままにしておくと、いわゆるピンポン感染と呼ばれる、互いに再感染を繰り返す状態になることがあります。
また、感染を完全に防ぐことはできませんが、コンドームの使用によって感染リスクを低下させることができます。
さらに、感染リスクの高い相手との性行為を避けることも、予防の一助となります。


