淋病(淋菌)
著者:院長 福地裕三
淋病とは
淋病とは、淋菌に感染することによって発症する性感染症です。
クラミジアと並び、性病の中でも頻度が高い性感染症の一つです。
男性は尿道に感染して尿道炎を、女性は膣を通じて子宮頸管に感染し、子宮頸管炎を引き起こします。
また、肛門性交によって肛門に感染することもあります。
淋菌は単独では生存できない弱い菌でもあります。
人から人への接触が主な感染経路となります。
さらに、1回の性行為における感染率は30〜50%とされており、感染力の高い菌です。
潜伏期間は数日から1週間程度で、症状を発症することが多いです。
最近では、明確な症状が現れない無症候性のケースも少なくありません。
尿道や膣に比べて、咽頭や肛門では症状が乏しいことが多くあります。
治療せずに放置すると、重症化する恐れもあります。
男性では、尿道炎から精巣上体炎へと進行することがあり、
女性では、子宮頸管炎から卵管炎や骨盤内感染へと発展することがあります。
近年、最も問題となっているのは、淋菌の抗菌薬に対する耐性化です。
これまで効果があった抗生物質が使用できなくなってきています。
そのため、今後は治療が困難になる症例が出てくる可能性もあります。
淋菌の顕微鏡写真
出典:CDC
症状
男性の場合
尿道炎の症状としては、尿道の違和感やかゆみなどが挙げられます。
さらに、激しい尿道痛を伴うこともあります。
また、黄白色のドロっとした膿が排出されることもあります。
一方で、無症候性といって、明確な症状がほとんど見られない場合もあります。
尿道炎が精巣上体炎に進行した場合には、陰嚢が腫れて痛みを伴うことがあります。
放置すると、不妊の原因になる可能性もあります。
女性の場合
おりものの変化や増加、不正出血などが一般的な症状です。
それでも、男性に比べると症状が乏しいことが多くあります。
無症状のまま、治療を受けずに経過してしまうこともあります。
放置すると、卵管炎や骨盤内感染、さらには肝周囲炎へと進行することがあります。
また、子宮外妊娠などを引き起こし、不妊の原因になることもあります。
のどや肛門の場合
のどへの感染は、自覚症状に乏しいことが多くあります。
症状がある場合には、のどの違和感やかゆみ、痛みなどが現れます。
肛門性交によって肛門に感染した場合の症状は、肛門のかゆみや違和感などです。
中には、性交時の痛みや血便がみられる方もいます。
淋菌感染症定点当たり報告数のグラフ
出典:国立感染症研究所
検査と診断
検査の方法
男性は尿を採取して検査を行います。
女性は綿棒のような器具を用いて、膣から分泌物を採取して検査を行います。
生理中は検査の精度が低下するため、生理が終わってから実施するのが望ましいとされています。
のどの検査は、食塩水やミネラルウォーターでうがいをして行います。
肛門の場合は、綿棒のような器具を肛門に数センチ挿入して採取します。
検査の種類
検査には、即日で結果がわかる簡易キットと、より精度の高い精密検査があります。
精密検査には、PCR法、SDA法、TMA法などがあり、いずれも高精度な検査方法です。
PCR法やSDA法は、DNAをターゲットとして増幅し、検出する方法です。
TMA法は、rRNAをターゲットにして増幅・検出する方法です。
当院では、精度の高いPCR法による検査を推奨しております。
このほか、即日検査には「イムノクロマトグラフィー法」と呼ばれる簡易検査キットもあり、
わずか数十分で結果が判明しますが、前述の精密検査と比べると精度は劣ります。
なお、女性で生理中の方は検査の精度が低下するため、生理が終わってからの検査をお願いしております。
| 項目 | 採取部 | 料金 |
|---|---|---|
| 淋病 PCR | 尿道 | 5,500円 |
| 淋病 即日 | 尿道 | 5,500円 |
| 淋病 PCR | 膣 | 5,500円 |
| 淋病 即日 | 膣 | 5,500円 |
| 淋病 | のど | 5,500円 |
| 淋病 | 肛門 | 5,500円 |
※ 即日検査はPCR検査より精度の落ちる検査になります。
※ 淋病が疑わしい場合は検査せずにすぐに点滴も可能です。
治療
内服の抗生物質は耐性が問題となっており、現在のガイドラインでも推奨されていません。
そのため、淋病の治療にはです。点滴による抗菌薬の投与が有効です。
点滴の所要時間は20〜30分程度で、1回の投与で十分な効果が得られます。
この治療は、のどの感染にも性器の感染にも有効です。
どうしても点滴に抵抗がある場合には、内服薬での治療も可能ですが、治癒率は低下します。
| 項目 | 料金 | 用法 |
|---|---|---|
| 淋病 | 20,000円 | 1回点滴 |
治癒判定
適切に抗生物質を使用し服用した場合でも、耐性菌の影響で効果が十分に得られないことがあるため、治癒判定の検査が必要です。
近年では、抗生物質が効きづらい「スーパー淋病」と呼ばれる症例の報告も見受けられます。
治療直後は、治療済みの死菌を検出してしまい、治っていても検査結果が陽性となる場合があります。
そのため、治療後は2週間程度あけてからの再検査をおすすめしています。

予防
パートナーがいる場合は、パートナーも検査を受け、陽性であれば治療が必要です。
治療をしないと、「ピンポン感染」といって、互いに再感染を繰り返してしまう可能性があります。
また、感染を完全に防ぐことはできませんが、コンドームを使用することで感染リスクを低下させることができます。
リスクの高い相手との性行為を避けることも、感染予防に有効です。
よくある質問FAQ
Q1. 潜伏期間はどれくらい?
A. 多くは2〜7日です。のどや直腸は無症状のこともあります。
Q2. どんな検査をしますか?
A. 尿・のど・膣ぬぐい・直腸ぬぐいなど、部位ごとに調べます。尿が陰性でも咽頭や直腸が陽性のことがあります。
Q3. いつ検査すると良い?
A. 心当たりから24時間以降で陽性になります。
Q4. 結果はどれくらいで分かる?
A. 当日〜翌日。WEBやスマホで確認できます。
Q5. 治療は点滴?飲み薬?
A. 点滴での治療が確実です。
Q6. パートナーは検査や治療が必要?
A. はい。同時検査や同時治療が再感染の防止に有効です。治癒確認までは性行為を控えるのが基本です。
Q7. コンドームで防げますか?
A. リスクは下がりますが、オーラル等ではのどが感染することがあります。定期検査も大切です。
Q8. 治ったかどうかの再検査は?
A. 目安は治療後2週間。医師の案内に従ってください。
Q9. 他の性感染症も同時に調べるべき?
A. はい。クラミジア・梅毒・HIVなどをまとめて検査すると効率的です。
(更新:2025年11月14日)


