HPVワクチン(ガーダシル4価、シルガード9価)
著者:院長 福地裕三
HPVについて
HPVとは Human Papillomavirus(ヒトパピローマウイルス)の略で、日本語では「ヒト乳頭腫ウイルス」といいます。
HPVには100種類を超える型があるといわれており、その中には良性の腫瘍を引き起こすものと、悪性化するものがあります。
良性のものを「低リスクHPV」、悪性化するものを「高リスクHPV」と呼びます。
HPVに感染しただけでは多くの場合症状はなく、約90%は自身の免疫によって自然に排出されます。
一方、残りの約10%では感染が長期間持続することがあります。
低リスクHPVの場合、長い潜伏期間を経て尖圭コンジローマを引き起こす可能性があります。
高リスクHPVの場合は、長期間の感染を経て子宮頸がんに移行するリスクが高まります。
低リスクHPV
低リスクHPVの主な型は、6型と11型が関与していると考えられています。
男性では生涯のうち約90%、女性では約80%が何らかのHPVに感染するといわれています。
ほとんどの場合は自身の免疫によってウイルスが排出されますが、一部の型では感染が長期間持続することがあります。
これらの型は、尖圭コンジローマの発生に関与します。
尖圭コンジローマは、陰部や会陰、肛門周囲に特徴的なイボ(疣贅)が生じる疾患です。
症状や部位の状態に応じて、液体窒素による凍結療法や塗り薬による治療が行われます。
イボが大きい場合や再発を繰り返す場合には、外科的な切除が必要となることもあります。
高リスクHPV
高リスクHPVの主な型は、16型と18型が関与していると考えられています。
そのほかにも31型、33型、45型、52型、58型などが知られています。
これら7つの型で、子宮頸がんに関与するHPVの約90%をカバーするといわれています。
女性では、生涯のうち約50%が高リスクHPVに感染すると考えられています。
ただし、感染しても数年以内に約90%は自身の免疫によってウイルスが排出されます。
一方で、排出されなかった残りの約10%では、子宮頸がんへ移行するリスクが高まります。
また、その間にウイルスが自然に排出されていなくなることも多いとされています。
子宮頸がんは検診による早期発見が重要です。
男性の場合、感染の頻度は女性より低いものの、陰茎がんのリスクとなることがあります。
さらに、HPVの感染部位によっては、咽頭がんや直腸がんのリスクにもつながる可能性があります。
検査について
HPV検査では、低リスク型や高リスク型のウイルスに感染しているかを調べます。
検査では型の詳細までは判定できず、結果は「陽性」または「陰性」として示されます。
型を知りたい場合は、HPVの型別検査を実施しています。
男性の場合
陰茎や亀頭の部分を、刷毛のような専用ブラシで擦って検体を採取し、検査を行います。
女性の場合
腟内の分泌液を、刷毛のような専用ブラシでぬぐい取り、検査を行います。
予防について
HPVワクチンは、感染予防に非常に有効です。
現在は、4価ワクチン(ガーダシル) と 9価ワクチン(シルガード) のいずれかを選んで接種することができます。
4価ワクチンは、低リスク型の6型・11型と、高リスク型の16型・18型の4種類をカバーします。
9価ワクチンは、低リスク型の6型・11型、高リスク型の16型・18型・31型・33型・45型・52型・58型の計9種類をカバーします。
いずれのワクチンも、3回の接種で十分な免疫を獲得できるとされています。
接種スケジュールは、初回接種から2か月後および6か月後にそれぞれ追加接種を行う形となります。
女性は、4価または9価のいずれかを選んで接種することができます。
男性も、4価・9価いずれのワクチンも補償適応の対象>として接種が認められています。
男性の4価は2020年12月より日本で承認がおりました。
男性の9価も2025年8月より承認がおり適応されることになりました。
そのため、女性男性問わず接種の適応となっております。
当院での接種の流れ
現在、ワクチンの在庫は十分に確保されているため、事前の予約は不要です。
接種当日は、簡単な問診票のご記入をお願いしております。
また、接種後は体調の変化がないか確認するため、一定時間院内でお待ちいただいております。
| 項目 | 料金 | 回数 |
|---|---|---|
| HPV4価ワクチン(ガーダシル) | 22,000円 | 1回分 |
| HPV9価ワクチン(シルガード) | 33,000円 | 1回分 |
※税込価格になります、その他に諸費用はかかりません
副反応
最も多い副反応は、注射部位の腫れ・赤み・痛みですが、ほとんどの場合は数日で軽快します。
発熱や頭痛、不快感などを生じることもありますが、これらも多くは数日以内に改善します。
アナフィラキシーなど重篤な副作用は世界的には100万人に1人程度と言われています。
日本では、これまでに300万人以上が接種し、5例で複合性局所疼痛症候群(CRPS)という重篤な副作用が報告されています。
他のワクチンと比較して、HPVワクチンの副反応が特に多いわけではありません。
ただし、過去には副反応に関して社会的に問題視された経緯があるのも事実です。


