男性不妊検査外来
著者:院長 福地裕三(日本泌尿器科学会ガイドライン準拠)
不妊の原因は男女どちらにもあります。
一般に1年妊活しても妊娠に至らない場合(女性が35歳以上は6か月)は、早めの検査が推奨されます。検査で原因が見つかると、治療の近道になります。まずは基本検査から始めましょう。
男性不妊症とは
不妊症の原因は、約半数が男性側にもあることが分かってきています。
そのため、女性だけが検査や治療を行っていても、なかなか妊娠には至らないことがあります。
男性側の主な原因としては、造精機能障害、性感染症、勃起不全や射精障害などが挙げられます。
しかし、それでも原因が特定できず、「原因不明」と診断されるケースも少なくありません。
また、さまざまな生活習慣が男性不妊に関係しているとも言われています。
さらに、35歳を過ぎると、男女ともに加齢の影響で不妊のリスクが高まることが知られています。
原因とは
造精機能障害
精子をつくる機能が低下していることが、男性不妊の約8割を占める原因とされています。
たとえば、精巣静脈瘤など血流の異常が、精子の形成に悪影響を及ぼしていることがあります。
また、精子の数が極端に少ない「乏精子症」や、まったく精子が見られない「無精子症」などの症状もあります。
さらに、十分な精子の数があっても、運動率が低い「精子無力症」と呼ばれる状態も存在します。
精巣静脈瘤
精巣静脈瘤は、男性の約15%に認められると言われております。
さらには男性不妊の原因のうち約40%を占めています。
これは、精巣の静脈に逆流が起こり、静脈の血管が拡張した状態を指します。
このような状態になると、精巣の温度が上昇し、精子の生成に悪影響を及ぼすことがあります。
精巣静脈瘤を治療することで、精子の質の改善が期待できる場合があります。
また、視診によって診断が可能なケースもあります。
乏精子症
乏精子症とは、精子の数が少ない状態を指します。
基準よりやや少ない程度であれば、タイミング法が有効とされることがあります。
しかし、精子の数が極端に少ない場合には、人工授精や体外受精などの治療が必要になることもあります。
無精子症
無精子症とは、射出された精液中に精子が1匹も存在しない状態を指します。
ただし、精巣内に精子が存在している場合には、顕微授精などの不妊治療が可能なこともあります。
精子無力症
精子無力症とは、精子の数は十分にあるものの、運動率が低く、動きが悪い状態を指します。
このような場合でも、人工授精などの不妊治療が可能なこともあります。
性感染症
性感染症にかかっていると、不妊の原因になることがあります。
自覚症状が乏しいため、感染に気づかないまま過ごしているケースも少なくありません。
症状がなくても、体内で炎症が起きていると、精子の運動率が低下することがあります。
治療によって炎症が改善されると、精子の状態が健全に近づく可能性があります。
膿精液症
膿精液症とは、前立腺や精嚢の炎症によって、精液中の白血球が増加している状態を指します。
この炎症の影響により、精子の運動率が低下することがあります。
検査とは
男性不妊の原因の中で最も多いのは精子に関する問題であるため、まずは精液検査を受けることがおすすめです。
そのほかにも、性ホルモンのバランスが崩れることで生殖機能に影響を与えることがあります。
さらに、精子の活動を妨げる要因が存在したり、遺伝的な要因によって機能に影響が及ぶ場合もあります。
精液検査
精液検査では、精液の量、精液中の精子の数、精子の奇形率の3項目を調べます。
これらの数値が正常値から逸脱している場合、不妊の原因となっている可能性があります。
なお、当院では検査を外部機関に委託しているため、精子の運動率の測定は行っておりません。あらかじめご了承ください。
ホルモン検査
ホルモン検査では、不妊に関与する性ホルモンの値を採血によって調べます。
ホルモンの分泌量に異常があると、生殖機能に影響を及ぼすことがあります。
その結果、精子の質や量が低下している場合もあります。
抗精子抗体
精子に対する抗体の有無を、採血によって調べます。
抗体が認められる場合、精子の運動性が低下し、受精の妨げになる可能性があります。
なお、当院では現在、抗精子抗体検査は実施しておりません。
染色体検査
採血により、染色体の異常の有無を調べる検査です。
染色体の異常が見られると、生殖機能に影響を及ぼす場合があります。
なお、当院では現在、染色体を含む遺伝子検査は実施しておりません。
| 項目 | 料金 | 検査 |
|---|---|---|
| 精液検査 | 5,500円 | 精液 |
| 性ホルモン4種検査セット | 22,000円 | 血液 |
| 抗精子抗体検査 | (休止中) | 血液 |
| 染色体検査 | (休止中) | 血液 |
検査方法
精液検査
精液を採取するための専用スピッツ(容器)をお渡しします。
精液量も測定対象となるため、採取前は2〜3日の禁欲期間を設けることをおすすめします。
採取ができましたら、その日のうちにクリニックへご持参ください。
どうしてもクリニック内で採取をご希望の場合は、お化粧室をご利用いただく形となります。
ご提出後、2〜3日ほどで検査結果が判明します。
結果はWEB上で正常値と比較しながらご確認いただけます。
また、分かりやすいコメントも添えておりますので、参考になさってください。
性ホルモン検査・抗精子抗体検査
いずれの検査も、採血によって行います。
性ホルモン検査の結果は、2〜3日ほどで判明します。
一方、抗精子抗体検査は特殊検査となるため、結果が出るまでに10〜14日程度かかります。
検査結果は、WEB上で正常値と比較しながらご確認いただけます。
また、分かりやすいコメントも添えておりますので、ぜひご参考になさってください。

豆知識
「タイミング法」は情報戦
排卵検査薬や超音波で排卵前後を見極めると効率的。性交の頻度やタイミングは数を打つより質を重視。
男性検査は入口が大事
一回の精液検査で判断せず、複数回で確認することがあります。採取前の禁欲期間は守りましょう。
感染症は治してから
性感染症が陽性の時は同時治療や治癒確認を徹底。再感染を防ぐことが近道です。
年齢と期間で戦略変更
35歳を超える・不妊期間が長い・検査で複合要因あり、の場合は次の段階へ早めに進む選択も。
よくある質問(FAQ)
Q1. いつ病院に行けばいい?
A. 目安は1年の妊活で妊娠しない場合(女性35歳以上は6か月)。生理不順・強い月経痛・性感染症の既往・流産を繰り返す・男性側の射精や勃起の悩みがある時はさらに早めの受診がおすすめです。
Q2. 最初に何を調べますか?
A. まず女性はホルモン・排卵・卵管(通水/造影)・子宮形態、男性は精液検査(量・濃度・運動率など)。必要に応じて性感染症(クラミジア等)も確認します。
Q3. 男性不妊はどのくらいありますか?
A. 不妊の原因は男女双方にあることが多く、男性側の因子が関わるケースも珍しくありません。カップルで同時に検査を始めると効率的です。
Q4. 精液検査の準備は?
A. 性交や射精を2〜3日控えるのが一般的です。結果はWEBやスマホで確認できます。
Q5. クラミジア等の感染と不妊は関係ある?
A. はい。クラミジアなどは女性で卵管因子、男性で精路炎症の原因になることがあり、早期発見・治療が大切です。
Q6. できるだけ自然妊娠を目指したいのですが?
A. タイミング法(排卵日合わせ)、人工授精(IUI)、体外受精・顕微授精(IVF/ICSI)の順に段階的アプローチが一般的です。年齢や検査結果や不妊期間で最適な段階が変わります。
Q7. 何歳まで妊娠の可能性はありますか?
A. 妊娠率や流産率は加齢の影響を受けます。年齢は戻せないため、早めの評価と治療の優先順位づけが重要です。
Q8. 生活習慣で気をつけることは?
A. 禁煙、節度ある飲酒、適正体重、十分な睡眠、カフェインの摂り過ぎに注意。発熱やサウナの頻用は一時的に精子に影響することがあります。サプリは不足補充目的で(摂りすぎは逆効果)。
Q9. まずは何から始めれば良い?
A. ①基礎体温や月経周期の記録 ②妊活期間・性交頻度の整理 ③感染症歴や既往・服薬の確認 ④同時受診の相談。
Q10. 二人とも大きな異常がなかった場合は?
A. 原因不明不妊のこともあります。その場合でも、タイミングの最適化や軽度の治療介入で妊娠に至ることがあります。医師と期限を決めて段階的に進めましょう。
Q11. セカンドオピニオンや紹介状は出してもらえますか?
A. はい。高度生殖医療が必要と判断された場合は連携医療機関にご紹介します。希望があればセカンドオピニオンの情報提供書を作成します。
(最新の知見に基づく最終更新日:2025年12月18日)

