HIV・エイズ
著者:院長 福地裕三(日本性感染症学会ガイドライン準拠)
HIVは、血液や体液を介して感染する性感染症の中でも、特に重要な病気の一つです。
現在、さまざまな治療薬が開発されていますが、依然として深刻な性感染症であることに変わりはありません。
HIVは「ヒト免疫不全ウイルス」とも呼ばれ、免疫力を低下させるウイルスです。
免疫力とは、体に侵入した菌やウイルスなどから身を守る働きのことを指します。
HIVは、免疫に重要な役割を果たすTリンパ球やマクロファージといった細胞に感染します。
そのため、治療を行わずにいると徐々に免疫細胞が減少し、免疫力が低下してしまいます。
長い年月をかけて、健康な人であれば問題にならないような菌やウイルスによって、さまざまな病気を引き起こすようになります。
その病気が「エイズ指標疾患」に該当すると、エイズ(AIDS)を発症したと診断されます。
しかし、治療薬の進歩により、現在では感染者の予後は飛躍的に改善しています。
すぐにHIV検査を受けたい方(東京都新橋、匿名、即日)
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の透過電子顕微鏡画像
情報元:CDC
感染者数(最新データ:2024年)
日本におけるHIV感染者およびエイズ患者の累計は、すでに35,000人を超えています。
厚生労働省の公表によると、日本の2024年の新規報告数(HIV感染者+AIDS患者)は994件で、2年連続の増加となっています。 なおHIVに感染していたことを知らずに、AIDSを発症して初めて気づいたケースも一定数みられるため、早期検査や早期治療が重要です。
- 2024年の内訳:HIV感染者 662件、AIDS患者 332件(合計 994件)
- 累積報告数(凝固因子製剤による感染例を除く):HIV感染者 25,194件、AIDS患者 11,181件(合計 36,375件)
世界的には、約4,000万人がHIVに感染しているといわれています。
日本を含むアジア太平洋地域は、アフリカに次いで感染者数が多い地域とされています。
出典:国立感染症研究所
感染経路
HIVの主な感染経路は、性行為による感染・血液による感染・母子感染の3つです。
HIVを多く含む体液には、血液・精液・腟分泌液・母乳などがあります。
そのため、性行為や血液などの体液を介した接触がない限り、感染の可能性はほとんどありません。
通常の社会生活を送っている中で、HIVに感染することはありません。
性行為による感染
HIVは、精液・腟分泌液・血液に多く含まれています。
性行為(膣性交・肛門性交・オーラルセックスなど)を通じて感染するリスクがあります。
キスによる感染のリスクはほぼありませんが、口腔内に傷がある場合はリスクが高まる可能性があります。
手による性的接触では、通常、皮膚を通じて感染することはありません。
血液による感染
HIVに感染した血液の輸血、覚醒剤や薬物の回し打ち、あるいは医療現場での針刺し事故などによって感染する可能性があります。
HIV感染初期の人が献血を行った場合、検査でウイルスを検出できずにすり抜けてしまう可能性がゼロではありません。
ただし、日本の医療機関では針や注射器などを使い回すことはないため、感染リスクはありません。
母子感染(妊娠、出産、授乳)について
HIV感染が判明しても、適切な管理により母子感染のリスクを大きく下げることができます。 重要なのは妊娠中からART(抗HIV療法)でウイルス量を抑えることと、産科での計画的な管理です。
妊娠中(ART)
- 妊娠中は、産科と連携しながらARTを継続し、ウイルス量(HIV RNA)を抑えることが基本です。
- 妊娠が分かった時点、または妊娠を希望する時点で、必ず主治医(産科や感染症)へ相談してください。
分娩(経腟、帝王切開の考え方)
分娩方法は、妊娠後期のウイルス量(HIV RNA)や治療状況、産科的要因などを踏まえて産科で個別に決定します。 一般的には、妊娠後期のHIV RNAが高い場合や不明の場合には、母子感染リスクを下げる目的で予定帝王切開が検討されます。
- 目安として、HIV RNAが高値(例:1,000 copies/mL超)または不明の場合、妊娠38週前後での予定帝王切開が推奨されることがあります。
- 一方で、HIV RNAが十分に抑制されている場合は、産科的適応に準じて経腟分娩が選択されることもあります。
授乳(母乳、ミルク)
授乳は国や地域や医療体制により方針が異なります。一般に、人工栄養(ミルク)は授乳によるHIV感染リスクをなくせるため、 日本では人工栄養が基本となることが多いです。最終的な方針は産科や専門医の方針に従ってください。
- 母乳栄養を検討する場合は、ウイルス量の管理やフォロー体制が前提となります(自己判断で行わないでください)。
※ 当院は性感染症の自由診療クリニックです。妊娠中の管理や分娩は産科での対応となります。妊娠中または妊娠の可能性がある方は、まず産科へご相談ください。
感染経路(うつるケース、うつらないケース)
HIVは、主に性行為(膣や肛門)や、注射器の共用などによる血液曝露、母子感染によってうつります。 一方で、日常生活の接触で感染することはありません。
うつる可能性がある主なケース
- コンドームを使用しない(または不適切な使用の)肛門性交や膣性交
- 注射器や注射針の共用、血液が付着した器具の共用
- 妊娠、出産、授乳期における母子感染(適切な治療により大きく低下します)
うつらないケース(よくある誤解)
- 握手、ハグ、同じ空間で過ごす
- 咳、くしゃみ、会話
- 食器やコップの共有、トイレ、浴場、プール
- 汗、涙、唾液(血液が混じらない通常の範囲)
- 蚊などの虫刺され
症状
HIVに感染した後は、感染初期、無症候期、エイズ発症期という順に経過をたどります。
感染初期の症状は、感染から2〜4週間ほどで現れることが多いです。
主な症状としては、発熱・のどの痛み・倦怠感・筋肉痛など、インフルエンザに似た症状がみられることがあります。
その後、無症候期に入り、症状のない期間が数年から10年以上続くこともあります。
この期間には個人差があり、1〜2年で発症する人もいれば、長期間症状が現れない人もいます。
無症候期の間も、体内では徐々に免疫機能が低下していきます。
そして最終的には、エイズ(AIDS)を発症する経過をたどります。
エイズとは
エイズ(AIDS)は、後天性免疫不全症候群とも呼ばれます。
HIVが免疫細胞に次々と感染し、それらの細胞が破壊されて免疫機能が低下してくると、エイズを発症します。
エイズを発症すると、下痢・寝汗・体重減少などの症状が現れることがあります。
また、「日和見感染」といって、健康な人では問題にならないような菌やウイルスによって、さまざまな症状や病気を引き起こすようになります。
これらの病気がエイズ指標疾患に該当すると、エイズを発症したと診断されます。
しかし、現代の医療ではHIVを完全に排除することは難しいものの、適切な治療によってエイズの発症を抑えることが可能です。
HIVに感染していても、早期に発見し適切な治療を受ければ、エイズの発症を防ぐことができます。
HIVとAIDS(エイズ)の違い
HIVはウイルスの名称で、体内の免疫(主にCD4陽性Tリンパ球)を徐々に低下させます。 一方、AIDS(エイズ)は、HIV感染によって免疫が低下し、特定の感染症やがんなどを発症した状態を指します。
現在は治療薬の進歩により、早期に治療を開始し、継続することで、長期にわたり安定した生活が可能です。
検査について
HIVの検査には、即日検査・PCR法・WB法(ウエスタンブロット法)などが一般的に用いられます。
即日検査(抗原抗体検査・第4世代)
即日検査は、第4世代の抗原抗体検査と呼ばれ、HIVの抗原および抗体の両方を調べる検査です。
感染の可能性があった時点から4週間以上経過していれば、検査を受けることができます。
厚生労働省のガイドラインによると、感染の機会から3か月(12週間)以上経過していれば、確実に感染を否定できます。
また、HIVには1型と2型がありますが、どちらの型も検出可能です。
ごくまれに、1%未満の確率で偽陽性が出ることがあります。
「偽陽性」とは、実際には感染していないにもかかわらず、検査で陽性と判定されることを指します。
検査結果は、およそ15〜20分程度で判明します。
PCR法(HIV-1 NAT検査)
PCR法(NAT検査)は、即日検査よりも早期にHIV感染を検出できる検査です。
HIVのRNA量をPCR法によって調べるため、非常に精度の高い検査とされています。
この検査は、感染の機会から13日以上経過していれば実施可能です。
ただし、確定診断のためには、感染の機会から3か月以上経過してから即日検査による再検査を行うことが推奨されています。
検査結果が判明するまでには、おおよそ4日程度を要します。
WB法(ウエスタンブロット法)
WB法は、ウエスタンブロット法と呼ばれる検査です。
HIV検査で陽性反応が出た場合に、その結果が真の陽性なのか、偽陽性なのかを判定するために行われます。
ただし、現在では、即日検査で陽性となった場合には、すぐにPCR法(NAT検査)を実施する方が、より早く確定診断が得られます。
検査を受けるタイミング(ウインドウ期の目安)
HIV検査には感染していても、検査で陽性にならない期間(ウインドウ期)があります。 不安がある場合は、まず検査を受け、必要に応じて適切な時期に再検査を行うことが大切です。
| 検査の種類 | 検出できる時期の目安 | 当院でのご案内 |
|---|---|---|
| 第4世代(抗原・抗体) | 感染機会から4週間以降で多くは判定が可能。 より確実に確認する目的で12週(約3か月)で再検査を推奨する場合があります。 |
まずは4週以降に検査 、陰性でも不安が残る場合は12週での再検査をご案内します。 |
| NAT(HIV RNA) | 感染機会から13日経過以降で検出できる場合があります(早期検出向け)。 | できるだけ早く確認したい、症状があるなどの場合はご相談ください。 |
※ 検査の適切な時期は、感染機会の内容、症状、既往歴などによって変わります。ご不安がある場合は当院までご相談ください。
| 項目 | 料金 | 採取部 |
|---|---|---|
| HIV 即日 | 5,500円 | 血液 |
| HIV NAT検査 | 11,000円 | 血液 |

治療について
HIV治療では、抗HIV療法(ART:抗レトロウイルス療法)によってHIVの増殖を抑え、体内のウイルス量を減少させていきます。
作用の異なる複数の抗HIV薬を組み合わせて服用するのが一般的です。
近年、治療薬の開発が飛躍的に進歩しており、より効果的で副作用の少ない薬剤が登場しています。
抗HIV薬によってウイルス量が減少すれば、体の免疫力は回復していきます。
抗HIV療法は、できるだけ早期に開始することが望ましいとされています。
治療を受けている間も、薬の服用以外はこれまでと同じように日常生活を送ることが可能です。
また、HIVの治療を開始すると、さまざまな医療費助成制度を利用することができます。
HIVは治療でうつさない状態を目指せます(U=U)
HIVは、治療(ART)を継続してウイルス量が検出限界未満(Undetectable)の状態を維持できると、 性行為で他者へ感染させるリスクはゼロ(U=U)とされています。
ただし、HIV以外の性感染症(梅毒、淋病、クラミジア等)を防ぐ目的では、引き続きコンドームの使用や定期検査が重要です。
※ U=Uは、Undetectable=Untransmittableの略になります。
感染が心配なときの緊急対応(PEP ペップ)
もし感染リスクのある行為があり、72時間以内であれば、内服薬による曝露後予防(PEP)で感染リスクを下げられる可能性があります。 できるだけ早い開始が重要です。
- PEPは原則28〜30日間の内服を行います
- すべてのケースで適応になるわけではありません(状況により医師が判断します)
▶ PEPの詳細:HIV/エイズ予防(PEP)
今後の予防(PrEP プレップ)も選択肢です
HIVに感染していない方が、感染リスクを下げるために行う予防内服(PrEP)があります。 継続内服(Daily デイリー)と必要時内服(On-demand オンデマンド)など、生活スタイルに合わせた方法をご提案します。
当院での検査やご相談
当院では、新橋エリアでのHIV検査や性感染症検査のご相談に対応しています。 検査のタイミングが分からない、症状がないが不安、パートナーの検査も含めて相談したいなど、遠慮なくご相談ください。
- HIV検査は、感染機会やご希望に応じてご提案します(第4世代、NATなど)
- HIV以外の性感染症を同時に確認することも可能です
- 必要に応じて、予防(PEP、PrEP)や治療のご相談も承ります
よくあるご質問
Q. HIVとAIDS(エイズ)の違いは何ですか?
A. HIVはウイルスの名前で、AIDS(エイズ)はHIV感染によって免疫が低下し、特定の病気を発症した状態を指します。HIVに感染しても、早期に治療を始めて継続することで、AIDSの発症を防げる可能性があります。
Q. 日常生活(握手、食器の共有、トイレ)で感染しますか?
A. 感染しません。HIVは、握手、食器の共有、トイレ、同じ空間で過ごすことなど、通常の日常生活の接触でうつる感染症ではありません。
Q. キスや唾液で感染しますか?
A. 通常の範囲では感染しません。唾液そのものでは感染しないと考えられています。
ただし、口腔内に出血がある、傷があるなど特殊な条件では、理論上リスクが議論されることがあります。不安があればご相談ください。
Q. 症状がなくても検査は必要ですか?
A. 必要な場合があります。HIVは、感染してもしばらく無症状のことがあるため、感染機会があった場合は症状の有無にかかわらず、適切な時期に検査を受けることが大切です。
Q. 検査はいつ受ければ正確ですか?
A. 検査法によって、見つけやすくなる時期が異なります。
第4世代検査は4週以降で多くは判定可能ですが、より確実に確認するため12週で再検査をおすすめすることがあります。早期確認にはNATが選択肢になる場合があります。
Q. オーラルセックスで感染しますか?
A. 可能性は高くありませんが、ゼロではありません。特に、口内炎、歯ぐきの出血、口腔内の傷がある場合などはリスクが上がる可能性があります。
Q. コンドームを使えば100%防げますか?
A. 感染リスクを大きく下げられますが、100%ではありません。正しい使用に加え、必要に応じて定期検査も大切です。
Q. PEPは誰でも受けられますか?
A. 72時間以内が目安で、状況により医師が適応を判断します。開始が早いほど重要で、できるだけ早く相談することが大切です。
Q. PrEP(予防内服)とは何ですか?
A. HIVに感染していない方が、感染リスクを下げるために行う予防内服です。生活スタイルに応じて、Daily や On-demand を検討します。
Q. HIV陽性になったら、パートナーに必ずうつりますか?
A. 必ずうつるわけではありません。治療を継続し、ウイルス量が検出限界未満の状態を最低6か月以上維持できていれば、性行為での感染はしないとされています(U=U)。まずは早期受診と治療開始が重要です。
Q. PEPは何日飲みますか?いつまでに開始すべきですか?
A. PEPは原則28日間の内服を行います。開始はできるだけ早く、遅くとも曝露後72時間以内が目安です。72時間を過ぎると効果が期待しにくくなるため、迷う場合も早めにご相談ください。
Q. PrEP(オンデマンド、2-1-1)は誰でも使えますか?
A. 誰にでも向く方法ではありません。2-1-1(オンデマンド)PrEPは、主に成人MSMの肛門性交でエビデンスがある方法です。膣性交などでは、デイリーPrEPが優先されることが多いとされています。適応や服用方法は個別に確認が必要です。
Q. PEP/PrEPを使っている場合、HIV検査のタイミングは変わりますか?
A. はい。変わることがあります。PEP/PrEPの状況や曝露時期によって、適切な検査の組み合わせや再検査時期が変わるため、開始前のHIV陰性確認に加え、継続中も定期的(目安:3か月ごと)に検査をご案内します。
Q. 即日検査が陰性でも不安が残る場合、どうすればいいですか?
A. 感染直後はウインドウ期のため、陰性になることがあります。第4世代検査は4週以降で多くは判定可能ですが、より確実に確認するため12週(約3か月)で再検査をおすすめすることがあります。早期確認が必要な場合は、NATもご相談ください。
Q. HIVに感染しても、すぐAIDS(エイズ)になりますか?
A. すぐにAIDS(エイズ)になるわけではありません。HIV感染後は、無症状の期間が数年から10年以上続くこともあります。早期に検査を受け、適切な治療を始めて継続することで、AIDSの発症を防げる可能性があります。
(最新の知見に基づく最終更新日:2026年3月31日)

