梅毒
著者:院長 福地裕三
梅毒とは
梅毒はトレポネーマ(Treponema palidum subspecies pallidum)による感染症で
あらゆる性行為によって感染する性感染症です。
性行為による感染だけではなくキスでも感染するほど感染力は強いと言われています。
皮膚や粘膜の小さな傷からトレポネーマが侵入することで感染し、
血行性に全身に広がり様々な症状を引き起こす慢性の性感染症です。
母子感染したものは先天梅毒と呼び、それ以外を後天梅毒と呼びます。
皮膚や粘膜の発疹や臓器梅毒の症状を呈するものを顕症梅毒と呼び、
症状を認めないものを無症候梅毒と呼びます。
ペニシリンが発見するまでは治療のできない病気で多くの死者がいました。
江戸時代の遊女達は梅毒を大変恐れていたとも言われています。
現在ではきちんと治療すれば完治する病気となっています。
感染者数について
梅毒の患者数は2008年頃から近年急激に増加しております。
性サービス業の方が罹患するようなイメージですが一般の方へ感染が広がっています。
また梅毒に対する医師や患者の意識の低下も拍車をかけている印象です。
外国人観光客の増加に伴い、海外から持ち込まれてるのも1つの要因と言われています。
梅毒は感染力も強く、現状はアウトブレイク(流行)している状態です。
症状について
症状は第1期から徐々に進行し、無治療でいると第4期まで進行します。
症状は放っておくと消失してしまうため治ったと勘違いすることがあります。
その間も病期は第2期、第3期と進行しているので注意が必要です。
第1期(感染機会から3週間から3ヶ月の間に現れる)
初期硬結・硬性下疳
初期硬結とはトレポネーマの侵入部位である感染局所に軟骨様の硬結ができます。
硬性下疳とは初期硬結の周囲が盛り上がり中央が潰瘍となり形成されます。
いずれも一般的には痛みなどの自覚症状がないことが多い。
男性の好発部位は冠状溝や包皮、亀頭となります。
女性の好発部位は大陰唇、小陰唇、子宮頸部となります。
その後、やや遅れて鼠径部(足の付根)のリンパ節が腫れて触れることがあります。
これらの症状は放置していても2〜3週間で消えてしまいます。
第2期(感染機会から3ヶ月から3年の間に現れる)
第2期に進行すると全身に様々な症状が現れてきます。
梅毒性バラ疹
発疹が体を中心に顔や四肢、手足に現れます。
自覚症状もなく数週で消えてしまいます。
丘疹性梅毒疹
小豆大の赤っぽい丘疹が体や四肢、顔、手足に現れます。
扁平コンジローマ
肛門や外陰部によく見られ扁平状のイボを形成します。
梅毒性アンギーナ
扁桃を中心にのどに赤みや口内炎様の症状が現れます。
梅毒性脱毛
頭皮が全体的に薄くなったり、部分的に虫食い状に脱毛することもあります。
第3期(感染機会から3年から10年の間に現れる)
結節性梅毒疹
皮膚や骨、筋肉などにゴムのような大きめのゴム腫という腫瘤を形成します。
鼻にできたゴム腫を鞍鼻とも言います。
現在では医療の発達により現代ではほとんどみられなくなってます。
第4期(感染機会から10年以降に現れる)
梅毒より大動脈で炎症が起こったり瘤ができたりします。
神経である脊髄を侵して麻痺を引き起こすこともあります。
ここまで進行した症例はほとんどみられなくなってます。
検査について
梅毒の検査はTP抗体法とRPR法(STS法)の検査があります。
TP抗体法は感染機会から4週間たっていれば検査できます。
RPR法は感染に比例して連動し、必要であれば検査を行います。
結果の解釈
TP(ー)、RPR(ー)
梅毒の感染はない。感染初期の可能性があるときは期間を開けて再検査。
TP(ー)、RPR(+)
梅毒感染の初期。期間を開けてTP(+)にならないときは生物学的偽陽性(BFP)の可能性。
ただし最近はTPの方が精度が高いため、感染例でこのような結果になることはほとんどありません。
TP(+)、RPR(+)
梅毒感染の状態。梅毒治療中や治療後間もない時期。
TP(+)、RPR(ー)
梅毒治癒の状態。梅毒の既往がない場合はTP法の偽陽性の可能性。
項目 | 料金 | 採取部 |
---|---|---|
梅毒 即日精密 | 5,500円 | 血液 |
治療
ペニシリン系やテトラサイクリン系の抗生剤で治療します。
治療期間
第1期は2〜4週間の内服加療
第2期は4〜8週間の内服加療
第3期は8〜12週間の内服加療
項目 | 料金 | 用法 |
---|---|---|
梅毒 | 11,000円 | 2週間分(2〜8週間内服) |
※ 送料無料、指定住所へ郵送
治癒の判定
RPR法(STS法)は梅毒の抗体価と良く相関するので治癒判定に用います。
値がある一定の水準以下になるか陰性化することで治癒判定とします。
値が再び上昇したり改善に乏しい場合は再治療を行います。
なおTP抗原法は治療効果を反映しないので治癒判定には使えません。
またTP抗原法の値は治癒しても基本的に陰性化せずに残ります。
予防
パートナーがいる場合はパートナーも検査して陽性であれば治療が必要です。
治療しないとピンポン感染といって再度うつし合ってしまいます。
また感染を完全には防げませんがコンドームの使用は感染リスクを低下させることはできます。
リスクのある人との性行為を避けることでもリスクを減らすことができます。