HIV・エイズ
著者:院長 福地裕三
HIVは血液や体液を介して感染する性感染症の中でも重要な病気の1つです。
治療薬がいろいろと開発されてますが深刻な性感染症であることは変わりません。
HIVはヒト免疫不全ウイルスとも言われており免疫力を低下させる病気です。
免疫力とは体に侵入した菌やウイルスなどから体を守る作用があります。
HIVは免疫に必要なTリンパ球やマクロファージといった細胞に感染していきます。
そのため治療せずにいると徐々に免疫細胞が減り免疫力が落ちてきてしまいます。
長い年月をかけて健康な人なら何ともない菌やウイルスで病気を引き起こしてきます。
その病気が「エイズ指標疾患」 とされる病気にあてはまると、エイズの発症と診断されます。
それでも治療薬の進歩により感染者の予後は飛躍的に改善しています。
感染者数
日本でのHIV感染者・エイズ患者の数は累計で3万人を超えてきてます。
2019年5月現在、HIV感染者21,739人、AIDS患者9646人の合計31,385人です。
毎年1200人以上のHIV感染・エイズ患者が報告されています。
世界的には4000万人のHIV感染がいると言われています。
日本を含むアジア太平洋地域はアフリカについで感染者数が多い地域になります。
出典:国立感染症研究所
感染経路
HIVの主な感染経路は性行為による感染、血液による感染、母子感染の3つです。
HIVを多く含むのは血液、精液、腟分泌液、母乳などの体液です。
そのため性行為や血液などの体液を介した接触がない限り感染の可能性はほぼゼロです。
通常の社会生活を送っていれば感染することはありません。
性行為による感染
HIVは精液、腟分泌液、血液に多く含まれています。
性行為やオーラル、肛門性交などあらゆる性行為で感染のリスクがあります。
キスによる感染のリスクは低いですが口腔内に傷があるとリスクが高まります。
手での行為では通常皮膚から感染することはありません。
血液による感染
HIVが感染している血液の輸血や覚醒剤や薬物の回し打ち医療現場での針刺し事故で感染する可能性がでてきます。
HIV感染初期の人が献血をした場合、検査をすり抜けてしまう可能性がゼロではありません。
日本の医療機関では針などは使い回すことがないのでリスクはありません。
母子感染
HIVに感染している妊婦が気付かずに出産してしまうと赤ちゃんへ感染する可能性があります。
またHIVに感染している母体からの授乳もリスクとなります。
妊娠初期に感染がわかり適切に対応すれば感染リスクは大幅に低下させることができます。
まず妊娠したら妊婦健診などでHIVの検査を受けましょう。
感染していた場合はHAART(多剤併用療法)を開始することが一般的です。
また分娩は日本では帝王切開が推奨されています。
産道からの分娩よりも大幅に感染リスクを低下させることができるためです。
症状
HIVに感染した後は感染初期〜無症候期〜エイズ発症期の順で経過をたどります。
感染初期の症状は感染から2〜4週間で出現することが多いです。
症状としては発熱やのどの痛み、だるさ、筋肉痛などのインフルエンザのような症状がみられることがあります。
その後は無症候期にはいり症状がない期間が数年から10年以上続きます。
期間には個人差があり1〜2年で発症する人もいれば長期間症状が出ない人もいます。
その間も徐々に免疫の機能は低下していきます。
ゆくゆくはエイズを発症する経過となります。
エイズとは
エイズは後天性免疫不全症候群とも呼ばれています。
HIVが免疫細胞にどんどん感染し細胞が壊され免疫が低下してくるとエイズを発症します。
エイズを発症すると下痢や寝汗、体重減少などの症状がでてくることがあります。
日和見感染といって健康な人では何ともない菌やウイルスで症状を引き起こしてしまいます。
これらの病気がエイズ指標疾患に当てはまるとエイズ発症と診断されます。
ただ現代の医療ではHIVは排除できなくてもエイズ発症は抑えることができます。
HIVに感染していても早期発見できれば適切な治療をすることでエイズ発症は防げます。
検査について
一般的には即日検査、PCR法、WB法などを用います。
即日検査(抗原抗体検査第4世代)
即日検査は第4世代という抗原と抗体を調べる検査になります。
感染機会より4週間経過していれば検査が可能です。
厚生労働省のガイドラインに従うと感染機会より3ヶ月経過していれば確実に感染を否定できます。
またHIVには1型と2型がありますがいずれも検出ができます。
1%に満たない確率で偽陽性がでることがあります。
偽陽性とは感染してないのに陽性と出てしまうことを言います。
検査時間は20分程度で判明します。
PCR法(HIV1-NAT検査)
即日検査より早期に検出が可能な検査になります。
HIVのRNA量をPCR法を用いて検査するため、非常に精度の高い検査となります。
そのため感染機会から13日経過していれば検査が可能になります。
最終的には3ヶ月以上経過してから即日検査による再検査をおすすめしてます。
検査日数は4日程度要します。
WB法
WB法はウエスタンブロット法といいます。
HIVの検査で陽性がでたときに陽性反応が偽陽性なのか陽性なのか判断します。
ただ即日検査で陽性の場合は、すぐにPCR法(NAT)の検査を行う方が早く確定できます。
項目 | 料金 | 採取部 |
---|---|---|
HIV 即日 | 5,500円 | 血液 |
HIV NAT検査 | 11,000円 | 血液 |
治療について
抗HIV療法によりHIVの増殖を抑えてウイルス量を減らしていきます。
効き方の異なる抗HIV薬を複数組み合わせて内服します。
近年、治療薬の開発が飛躍的に進んでおります。
抗HIV薬によりウイルスの量が減れば体の免疫力は回復してきます。
抗HIV療法はなるべく早く始めたほうが良いと言われています。
薬を服用する以外は今まで通りの生活を営めます。
HIVの治療が始まると様々な助成制度を受けることができます。
予防について
リスク行為から72時間以内であればHIV予防内服で防ぐ事ができます。
PEP療法と言って、抗HIV薬を1ヶ月間内服することで高い確率で予防できます。
あらゆる性行為で感染することがありますのでコンドームを最初から最後まで
正しい使い方をすることが予防においては大事になってきます。
注射器具などの使い回しは決して行ってはいけません。
日本の医療機関の注射器具はすべて使い捨てが使われており安全です。
母子感染の予防は妊娠したら妊婦健診でHIVの検査を受けましょう。
感染がわかった場合でもリスクを避ける対策をとることはできます。